大学に入って、差別とは何かを真剣に考えてみた。
幸い、寮内には世間的な基準で言えば差別される人がたくさんいたので素材集めに苦労はない。
東京に住んで、私立の六年一貫校に行って、浪人もできて、とりあえずこのまま卒業、
就職すれば、食ってはいけるだろうと思ってた。
人間、身の丈以上のものはなかなか見えないねぇ。
世の中ではそうじゃない人もいっぱいいる、という当たり前の事実。
寮の空気に気おされたか、イキナリ、ドロップアウトを決断した大学一年冬のことでした。
再受験に失敗してから仙台に戻り、モクモクと学生の本道に熱き血潮を燃やす
わけはない。
相変わらず、差別を考えるために差別ネタ落語をひねり出していた。
あるとき、国道48号線(山形→仙台線)の医学部付属病院前を鬱委さんの車でとおった。
病院のとなりには佐々木義肢店という、トラッドな店構えの義足屋。
とたんにひらめく差別魂。
ああいう店には、因業そうなオヤジがいて、「し」と「ひ」の発音区別ができないんだよね。
で、キセルをポン、と落としながら、店の奥の火鉢に吸殻を捨てたりするんだ。
うちのみせぁ、そうりでえじんがきたってくべつはしねえよ、なんて言って欲しいなぁ。
この辺はよくあるイッセー尾形タイプのギャグですね。
そのうち、火のついたソウマエの魂は、6500rpmでフル回転だ。
そうそう、そんな時、事故で片足を失った一人の青年が
店の評判を聞きつけてやってくるんだ。
「おやじさん、オヤジさんの技量で、ボクのために義足をつくってください・・・」
「てめえ、しつけえんだ。作んねえっつったら作んねえんだよ」
「おう、おとき、塩もってきな。軒先にまいとけ」
仙台の冬は寒い。2月になれば雪がシンシンと降る。
軒先で、正座で粘る好青年。
おかみさんは
「おまいさん、あたしゃ、なんだか可哀想になってきちまったよぉ」
などというが
「関係ねい。あの若ぇのが勝手にやってるこった」
などとニベもない。
三日三晩、徹夜で粘った青年の前髪に、つららができるほど冷え込んだある日。
「おう、おとき、あの若ぇやつ、ちょっと連れてきな」
「え、そ、それじゃおまいさん」
「勘違いするんじゃねえやい。おれぁな、店先で人死にがでちゃあ不吉だと思っただけよ」
といいながら、夫のやさしい心根に感動するおかみさん。
やっぱり高等小学校出のこのしとと、40年連れ添ってきてよかったよぉ。
「おう、若ぇの。おめえ、なかなか根性あるじゃねえか」
寒さのあまり、歯の根もあわないほど震える好青年。
「近頃の若ぇ奴ぁ、みんなくらげみてえなのばっかりだと思ってたけどよ」
「おめえはなかなか骨があるな」
とそのとき、青年、急に顔を輝かせ
「いえ、オヤジさん、
骨がないからここにきました」
お後がよろしいようで。
速報!!
宗前ミー情報によると、実は佐々木義肢店は、小規模とは言え近代化された企業であり、
付属病院には営業マンが出入りしていたことが発覚!!