さあ、火曜日だ、と意識するところからここのところの火曜日は始まる。月曜日や木曜日にはない、この感覚は当然、NHKの『プロジェクトX』によるもので、ハマルととことんやらねば気がすまないソウマエ気質が全開になっている証左だ。そういえば昔、サッキーと台原のエンドーチェーンにあったボウリング場で、二人で45ゲームやったこともあったね。研究室にはあのときのスコアが後生大事に保存されているよ、丸機勝男くん。(桧丸尾守男より)

そこでソウマエは思った。トンネルマンたちはなんと美しいことか。そして、その美しさに感動しつつ、青函トンネルの問題点を指摘することは、政策評価の研究者としては矛盾がないのだ。

ちょっと考えればわかるが、トンネルマンをはじめとする現場の人間は、「貫通させる(具体的には先進導抗を貫通させ、本坑の目処をつける)」ことを目的として、その範囲内で最善を尽くしている。ドラマを見て胸を打たれるのは、彼らが最善どころか人間業とは思えぬような粘りと精神力で難関を次々に突破していくからだ。もちろん、彼らは「このトンネルが社会的に意味がある」という思いで作業を続けている。

しかし彼らが行っているのは、政策学的には政策でも施策でもない。事業ですらない業務なのである。業務の価値が低いとは限らず、事実青函トンネルプロジェクトは彼らの技術力によって具現化されたのだが、逆に言えば彼らにプロジェクトを否定する権限、あるいは航空と航路以外の輸送手段によって本州=北海道間のトラフィックを改善するという政策に意義を申し立てる権限vetoはない。

番組では、青函トンネルプロジェクトがそれ以外への技術的波及を見せた価値をそれとなく強調していた。だが、正直に言えばそれはキセル乗車みたいなものだ。公共工事は初めから何を改善するのか、どういう状況を達成するのかが明確でなければならない。そして、実現されるべき社会へのインパクトに対して、要する費用(つまりは胴元が国民から集めた寺銭だわな)とみあっているのか、納得して支払えるのかという部分が必要だ。

予測は常に覆されるのは事実であろう。だから、新幹線が出きるまで誰も交通分野であれほど大きな需要が、供給によって生み出されるとは思っていなかった。また、技術の広がりだって、予測不能である。だから、あるプロジェクトがたとえ社会的に見てすら赤字でも、長期的に見て社会のためになる例がないとはいわない。

だが、このロジックはしばしば効果の疑問な事業や、いまさら失敗とはいえない事業の言い訳として使われる。昔、某県の職員と話していて、ある農道空港の将来性について「いや、輸送する商品の付加価値を高めていけばこれからなんぼでもなんとかなる」と、真顔で言ったとき、さすがにビビッた。公式の席でそういう以外にない、という苦しげな表情で言っているなら(立場は)わかる。でも酒盛りの、気楽な席でそういうことを真顔で言われるとねー、やっぱり驚くよ。

で、話を元に戻すと、トンネルマンの熱き心を見ていると、怒りすら湧いてくる。こんなにすごい男たちを、市民から疑問視されるような結果になった事業に動員した責任を取るものが、誰もいないのだ!

富士山レーダーやVHSは、アウトプット(開発商品や事業結果)が市民生活の安定や幸福に直結しているのでわかりやすかった。開発者・推進者たちは、なんのためらいもなく自分たちの仕事がすばらしいものだったと言い切ることができる。そしてその誇りは永遠のものとなる。

青函のトンネルマンたちは、どうだろう?彼らが困難に打ち勝った過程をすばらしい仕事だと言わないものはいまい。だが、その結果が数兆円に上る事業費を納得させるだけの結果を市民生活にもたらしていない現状を見ると、彼らの情熱を浪費させたことに対して、申し訳ない気持ちになる。

ノーパンシャブシャブの接待疑惑で更迭された元大蔵官僚田谷は、主計官時代に整備新幹線予算を認めると昭和の三大バカ査定になってしまうと発言し、良識ある人々の喝采を浴びた。三大バカ査定とは、戦艦大和の建造、鍋田湾の干拓、そして青函トンネルだそうだ。そう、やつらはみんな知っていたのだ、青函トンネルが悲しいシロモノであることを。

僕が政策評価の勉強を始めたのはひょんなきっかけだった。だが、よきガバナンスを目指すという政治的理想の中で評価を位置づけるとき、この研究から離れることができなくなった。無論、我々は研究者として、評価制度に寄せられる過度の期待や誤解を振り払わねばならない。評価システムだって、できないことはできないのだ。

だが、航空技術者たちが神風特攻隊で散った若者に贖罪意識を持ちつづけるように、評価の研究に携わり、おじさんたちの意地に惚れるものなら、せめて、あんなことを二度と起こさないためにも、政治と行政のシステムに少しでもましな評価制度を埋め込んでいきたいと思っている。

何でこんな文章を書いたかって?

そりゃー、明日から新学期が始まるんで、すこしばかり気分が高揚してるんだヨ。